ごはんとお肉をしっかり食べる

ソクナさんは、車でアンコール遺跡を案内するガイド兼タクシーの運転手さん。普段の朝食は、家または外食で、米の飯と肉などのおかずをしっかり食べ、コーヒーを飲んでから仕事に出る。

今日の朝食は、お客さんと一緒に、山の遺跡へ向かう途中の休憩所で摂った。奥さん手製のバーベキューチキンとご飯の朝弁だ。特製のタレに漬け込み炭火でこんがり焼いた骨付きのモモ肉にご飯、それに、にんじんや大根、キュウリなどミックス野菜の甘酸っぱいピクルスと旨味のある甘辛いチリペーストがつく。木木が茂る緑の中での食事は気持ちがいいし、美味しい弁当のサービスはお客さんに喜ばれる。

ソクナさんの奥さんは、自宅で朝食の店をやっていて、炭火焼きの鶏肉とご飯の定食を売っているのだ。使う鶏肉は肉が締まって味のよい地鶏のみ。ブロイラーだと、食感がふにゃふにゃで気持悪いし味もよくないから売れないのだという。カンボジアにブロイラーが輸入されて二十年以上になるが、安いにも関わらず未だに敬遠されている。牛も鶏も放し飼いで自由に動き回っているカンボジア。鶏肉本来の美味しさを知る舌の肥えた人たちに、ブロイラーが受け入れられないのは当然だろう。

朝からガッツリ食べるソクナさんたち。人々の舌を肥えさせてきた豊かな食の姿が、アンコール遺跡のレリーフにも描かれている。

『栄養と料理』2017年1月号掲載 写真・文 沙智 Photographs&Text©️Sachi